仙台家庭裁判所 昭和43年(家)277号 審判 1968年6月27日
申立人 浅川三郎(仮名)
相手方 浅川信子(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
本件申立の趣旨は申立人は相手方に対し申立人の肩書住所において同居することを求めるものであつて、その申立の事情は、申立人と相手方とは昭和四二年四月二五日結婚し、同年五月一日その届出をなしたものであるが、申立人は○○駐在の国鉄○○車掌区勤務の車掌をしており、相手方は○○市に営業所のある○○電気工業株式会社に勤務しているので、この職場の関係から相手方の要望により結婚当初から別居し、申立人が仕事の上で○○駅まで列車に乗務した際(○○日間に一回位)とか、休日を利用し合計して月に四回位相手方のもとに通つていたのである。ところが相手方は、同年八月七日から理由なく夫婦関係を拒むようになつたのであるが、同年一二月の賞与の支給を受けてから会社をやめて申立人のもとにきて同居して生活する旨約していたことでもあるから、相手方に対し同居を求めるため本申立をした、というのである。
案ずるに、本件記録中の戸籍謄本、申立人および相手方各本人審問の結果並びに調査官山口清光の調査報告書によると、申立人と相手方とは昭和四二年四月二〇日結婚し、同年五月一日その届出をなしたものであるが、申立人は○○駐在の国鉄○○車掌区勤務の車掌をしており、相手方は○○市に営業所のある○○電気工業株式会社に勤務(同会社には二〇年余勤め経理課長をして月収四万六、〇〇〇円位を得ておる)しておるので、この職場の関係から結婚当初から別居し、申立人が仕事の上で○○駅まで乗務した際とか、休暇を利用して一個月に数回仙台市に居住の相手方のもとに通つていたのである。ところが申立人が結婚後間もなく相手方所有の家屋からあがる家賃二万円を生活費に繰入れることを希望したのに対し、相手方は賛成せず、反対に相手方が初婚なので子を産むことを希望したのに対し、申立人は先妻の子が二人もおることなので、これに賛成せず、このように両者の見解の対立があつたことから、相手方は申立人を金銭にこまかく、利己的な人であると思うようになり、夫婦関係についても次第に気が進まなくなり、同年八月中頃からこれを拒むようになつた。相手方の態度に業をにやした申立人は同年一〇月始めころ相手方に対し協議離婚届書を郵送しそれに印を押して送り返してもらい度いと言つてやつたのであるが、相手方としてはあまり突然のことなので返戻せずそのままにしておいたのであるけれども離婚の決意をかためるようになつたものであることを認めることができる。以上のような次第で婚姻関係は破綻にひんしておるのであつて、このような状態にあるのに相手方をして上記の職場を放棄させて申立人のもとに同居を強いることは相当とは認められない。よつて本件同居の申立を却下することとし、主文のように審判する。
(家事審判官 伊藤正彦)